経営者のための
会計×経営

経営者のための
会計×経営

2017年7月21日

借上住宅のメリットと注意点 -従業員編-

 

“福利厚生の一環や、会社の人材確保戦略として、若しくは節税対策として借上住宅(法人契約をし、会社が従業員に貸す)を考えています!”

というご相談をよく受けます。

借上制度は色々な観点からとても有効な手段と言えます。

しかし、例えば法人契約したマンションを無料で従業員に貸すような事があると、実質的な給与とみなされ従業員の所得税や住民税が多く取られてしまいます。

このような事態を防ぐため、当記事では会社が借上住宅制度を採用するにあたり必要なことをまとめていますので、しっかりと理解し効果的に運用しましょう。

※借上住宅は、給料に上乗せして支給する家賃補助とは異なります。また、当記事は従業員にフォーカスしておりますので、役員についてはこちらをご覧ください。(関連記事:借上住宅のメリットと注意点 -役員編-)

 

社宅制度を採用するメリット

 

借上住宅制度を採用するメリットは従業員側にも企業側にも存在します。

 

会社側のメリットは主に3つ

①家賃を実質的に負担するという”福利厚生”による従業員の満足度向上、ロイヤリティーが増える

②経費になる

③社会保険料が現金支給する場合より低くなることが多いので、社会保険料会社負担分も減額される

 

従業員側のメリットは主に4つ

①家賃を会社に負担してもらえる
②好きな住宅を選べる
③家賃の会社負担分は住宅手当と違い給料として認定されないため、所得税がかからない*
④家賃の会社負担分は現物支給として認定されるため、給料として受け取るよりも社会保険料が安くなる可能性が格段に高い
*③については条件があるので下記を参照下さい。

①と②については文字通りのメリットを享受することが出来ます。

③と④については、少し理解が必要なので次でご説明します。

 

社会保険料が安くなる可能性が高い理由

社会保険料が安くなると、従業員の手取りが増えるとともに会社負担分も安くなるため、会社と従業員の双方にとってメリットがあります。

社会保険料は報酬月額を元に決定し、この報酬の中には給料等の現金支給の物の他に、現物支給分も含めて計算をします。

具体的に現物支給とは、例えば通勤定期券や食事、そして社宅等が含まれます。

現物支給の場合、現金のようにその価格が明確ではないため何らかの基準を元にその価値を算定して報酬月額に加えるのですが、例えば日本年金機構では以下のような基準が開示されています。
全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)

当てはめて計算してもらえば分かるかと思いますが、社宅の場合の報酬額は現金支給より現物支給の方が断然低い金額で評価される事が多いです。尚、評価は居住用の部分のみを対象とするため、廊下、トイレ、台所等は覗いて計算します。

例 Aさん:給料30万円 借上住宅家賃10万円 会社負担50% 東京都50平米のマンションに居住(居住部分は40平米)

東京都の場合1畳につき2,590円(1畳=平米÷1.65)で評価されますので、

40平米÷1.65×2,590円=62,787円となります。(1円未満切捨)

実際に10万円の家賃であっても62,787円で評価され、ここから自己負担額50,000円を控除した12,787円が報酬月額に加算されます。その結果、合計で312,787円が月額報酬となり、社会保険料(健康保険+厚生年金)の従業員負担分は45,027円となります。

普通の家賃補助として、給料に50,000円加算して支給をこなった場合には、350,000円が月額報酬となるので、社会保険料は50,656円となります。

会社は社会保険料の半分を負担しますので、会社側も同じ金額の節約が見込めます。従業員が10人程度いる会社では毎月数万円からから10万円程度の節約が期待できます。

 

例では、”東京都” “50平米” “家賃10万円”としていますが、これは通常に比べ割安であり、

東京都で50平米であれば家賃15万円程度は見込まれるため、その50%の75,000円を自己負担していれば、評価額62,787円−75,000円でマイナスとなりますので、月額報酬も増えません。

このように、実際計算してみると月額報酬が増加しないケースも多くありますので、是非一度ご確認をして損のないようにして頂ければと思います。

 

家賃の会社負担分を給料認定させず、所得税をかけない方法

借上住宅制度を採用する前に気をつけないといけない事が一点あります。それは従業員が払う所得税です。

借上ではなく家賃補助を行う場合、補助額が給料と認定され、その分所得税及び住民税も多く課されます。

借上住宅の場合は、会社が契約しそれを従業員に又貸しして、従業員負担額を給料から控除するという形が一般的ですが、

会社が負担した分について、家賃補助と同様に給料認定される場合があります。

給料認定されないためには、一定額を従業員に負担してもらう必要があり、借上住宅賃料を全額会社負担としているような場合には、給料と認定されます。

 

賃料相当額の算出方法

一定額とは賃料相当額(実際の賃料ではない)の50%をであり、下記の式により算定される金額を指します。

次のaからcの合計額が賃貸料相当額になります。
a (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
b 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
c (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

上記の式により導き出された金額の50%以上を従業員が負担している場合には、給与として認定されません。

 

「固定資産税課税標準額」の把握

社宅や寮等が会社の自己所有の場合には、毎年6月前後に都税事務所や市区町村役場から「固定資産税の納税通知書」が送付されてきますので、同封されている「固定資産税・都市計画税明細書」等により、把握することが可能です。

自己所有ではない物件を、会社が賃貸する場合には、固定資産税評価額を把握する事が少し困難な場合があります。このような場合、貸主や仲介業者等から「固定資産税の課税標準額」を確認することが必要です。

この場合、「固定資産評価証明書」を利用する事が一般的です。
「固定資産評価証明書」は、不動産を管轄する都税事務所や市区町村役場で入手することができ、
所有者本人の他、その代理人又は借地人・借家人等が取得可能です。

 

総括 -どれくらいの節約が見込めるか-

先ほどと同じ例です。
例 Aさん:給料30万円 借上住宅家賃10万円 会社負担50% 東京都50平米のマンションに居住(居住部分は40平米)

 

家賃全額自己負担の場合

全額自己負担
補助/借上無し
全額自己負担
借上住宅
給料 300,000円 250,000円
家賃補助 無し 無し
社宅控除 無し -50,000円
社会保険料 -42,213円 – 36,585円
源泉税 -6,850円 -5,680円
給料支給額 250,937円  157,735円
家賃支払い  -100,000円  無し
 残金  150,937円  157,735円

 

 

家賃50%自己負担の場合

全額自己負担
補助/借上無し
全額自己負担
借上住宅
給料 300,000円 300,000円
家賃補助 50,000円 無し
社宅控除 無し -50,000円
社会保険料 -50,656円 -45,027円
源泉税 -8,420円 -7,180円
給料支給額 290,924円  197,793円
家賃支払い  -100,000円  無し
 残金  190,924円  197,793円

 

 

会社負担分は社会保険料の金額だけ変動します。

上記のように同じ家賃の負担であっても、 借上住宅の方が、従業員と会社の双方にとって良い事がわかります。

今回は給料30万円で計算を行いましたが、より高い給料でより高い家賃を支払う方が、より節約効果が高まると言えます。